臨床検査室は検体検査部門(血液、生化学・免疫血清、一般、輸血、微生物)、生理機能検査部門、病理検査部門の3部門で構成されています。
業務目標として「検査データ及び情報を、正確かつ迅速に提供する」・「診療支援ならびにチーム医療に貢献し、医療サービスの向上に努める」を掲げ、最新の検査機器を導入し、24時間365日対応で救命救急医療に貢献しています。
また、チーム医療の一員として、糖尿病教育入院の検査説明、NST(栄養サポートチーム)、ICT(感染対策チーム)、AST(抗菌薬適正使用支援チーム)、病棟カンファレンス等に参加しています。この他、入院患者さんの早朝採血を開院時から行っています。
医療の進歩とともに質の高い検査が求められる中、検査室としては精度管理報告会の実施や検査精度が評価される精度保証施設の認証を継続して取得しています。さらに個人の知識・技術の向上のため研修会への参加、学会発表や認定資格の取得などに取り組み、より良質な検査を提供できるよう努力を重ねています。
血液は、心臓から送り出されて心・血管系を循環する液体であり、生体の恒常性の維持に重要な役割を担っています。その主な役割は、酸素や二酸化炭素の運搬、生体防御、止血、体温調節などであり、種々の疾患や病態に伴って、血液成分の変化が生じます。
血液検査室では主に、血球成分を調べる「血液形態・機能検査」、血液が固まる仕組みを調べる「出血・凝固検査」、血液疾患の診断に欠かせない「骨髄検査」を行っています。
当院には血液内科があり、様々な血液疾患に対応するため、血液検査学の専門資格を取得した臨床検査技師が検査を担当しています。また、血液内科カンファレンスに参加し、医師や薬剤師、看護師などと情報を共有することにより、より質の高い検査を提供できるように努めています。
血液中の細胞(赤血球,白血球,血小板)の数とヘモグロビン濃度やヘマトクリット値を自動分析装置で測定し、貧血や多血症、感染症、出血傾向や血栓傾向などを調べる一般的な検査です。
また、必要に応じて臨床検査技師が異常細胞がいないか、顕微鏡で形態の観察をしています。
血球算定
白血球分類
網状赤血球数(Ret)
術前検査のスクリーニング、肝機能の把握や抗凝固薬のモニタリング等で行われる一般的な検査と、必要に応じてより詳細な検査を行っています。
プロトロンビン時間(PT)
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
フィブリノゲン量(FIB)
アンチトロンビン(AT)
フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)
Dダイマー
その他
骨髄液中の有核細胞数や巨核球数の算定、形態の観察や細胞の分類を当検査室で行っています。白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患の診断や治療効果の判定に必須の検査です。
赤血球沈降速度(赤沈)
特殊染色
生化学・免疫血清検査室では、血液(血球:血漿=約6:4)の血漿成分から線維素成分(止血機能の一部)を取り除いた血清成分を用いて検査を行います。この血清成分には糖質、脂質、蛋白質等が含まれ、これに対して複数の検査を行い、肝機能や腎機能、糖質、脂質等に異常がないか調べます。一度に複数の検査を行う為、大型の自動分析装置を用いて様々な検査項目の分析・測定を行っています。当検査室は大型の自動分析装置8台を有しており、全ての機器の保守点検、精度管理を毎日実施することで、正確な検査結果を迅速に提供しています。また、ベッドサイドでのアンモニア測定や糖尿病教育入院患者さんに対しての検査説明なども行っています。
無機質
糖質
脂質
蛋白質
非蛋白性窒素
生体色素
酵素
ホルモン
循環器バイオマーカー
抗てんかん薬
感染症
腫瘍マーカー
一般検査室では、尿、糞便、体腔液(胸水・腹水・髄液など)の検査を行っています。
尿検査では尿一般定性検査や尿生化学検査を主に行います。また、尿中の有形成分(細胞、円柱など)を顕微鏡で観察し、腎臓の機能や膀胱等の腫瘍細胞の有無を調べる尿沈査検査も行います。尿検査でご来院の際は、ビタミン剤やそれらを多く含む市販の風邪薬の服用は、検査結果に影響しますのでお控え下さい。鼻腔検体を用いるインフルエンザウイルス、A群溶連菌(溶血連鎖球菌)などの迅速検査も行っています。
尿一般定性検査
尿沈渣検査
尿生化学検査
尿中薬物検査
便潜血反応・便虫卵検査
血液中の成分(赤血球、血小板、蛋白成分、血液凝固因子)が不足したり、働きが悪くなった時に、その成分を補充するのが輸血療法の目的です。輸血療法に用いられる血液は血液センターで献血者から採血された血液およびその成分です。
輸血検査室では、患者さんの血液型や不規則抗体を調べ、血液センターから取り寄せた血液製剤と適合するかを検査し、患者さんにとって安全な製剤を迅速に供給しています。また、手術前にあらかじめご自身の血液を採取して保存し、その血液を輸血する「自己血輸血」の製剤保管を行っています(自己血輸血を行うには適応条件があります)。
年6回開催の輸血療法委員会で、医療現場における血液製剤の適正使用を推進する活動や、輸血にかかわる部署と日頃から連携し、必要に応じてシミュレーションを実施するなど、安全な輸血医療への取り組みを行っています。
また、当院は救命救急センターを有していることから、様々な原因の外傷、消化管出血、緊急手術などで輸血が必要になった場合、24時間対応で血液製剤を提供できる体制をとっています。安全な血液製剤を迅速に提供するために、緊急検査に携わるスタッフのトレーニングを定期的に開催しています。
血液型
不規則抗体スクリーニング
交差適合試験
不規則抗体同定
抗体価測定
直接抗グロブリン試験
間接抗グロブリン試験
母児血液型不適合妊娠の検査
輸血用血液製剤管理
自己血製剤保管管理
照射赤血球液
新鮮凍結血漿
照射濃厚血小板
アルブミン製剤
その他 各種血液製剤
微生物検査室では、感染症の原因となる微生物(主に細菌・真菌)を検体(血液、喀痰、尿など)から検出し、どのような抗菌薬(抗生物質)が効くかを調べています。
検体中の菌体を染色し、顕微鏡で原因菌を検索する『塗抹鏡検』、検体を培地に塗り菌を増殖させ、生化学性状などを調べて菌種を同定する『培養同定検査』、原因菌に効果のある抗菌薬を調べる『薬剤感受性試験』、その他迅速検査キットなどを用いた検査があります。
検査業務のほかに、感染対策チーム(ICT)、抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の一員となり、医師・看護師・薬剤師などと共にミーティングや病棟ラウンド、職員対象の感染管理勉強会の主催等、病院全体の感染対策活動に参加しています。また、当院は地域の医療機関と一定の頻度で会議を行い、感染対策強化のための連携を図っており、疫学統計に関する情報共有資料を作成するなどの活動もしています。
当検査室の特徴として、臨床検査科医師が感染症専門医であることから、微生物検査の結果をより迅速に感染症診療に役立てることが可能な環境となっています。
塗抹鏡検(主な染色法)
培養同定検査
薬剤感受性試験
※感染症の原因菌として検出される菌種の一例
Escherichia coli(大腸菌)
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)
Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
Enterococcus faecalis(腸球菌)
生理機能検査室では、様々な機器や装置を用いて患者さんの体の機能や状態を検査し、病気の診断に役立てています。臨床検査室の中でも最も患者さんと接する機会の多い検査室です。
病理検査室では、手術や内視鏡によって、患者さんの体より採取された病変の組織や細胞から、がんなどの病気を診断するため、顕微鏡標本を作製し、病理医と共に組織診検査や細胞診検査の診断業務を行っています。
病変が良性か、悪性かが正確に診断されることにより、主治医は治療方針を決定し、患者さんへの処置がなされます。
医療の進歩に重要な病理解剖も行っており、臨床病理検討会(CPC)も年間5回行っています。
内視鏡や穿刺生検等によって採取された小さな組織や、手術などで切除された臓器組織を、顕微鏡でみるために臨床検査技師が標本を作製し、病理医が診断をします。
~病理組織標本作製工程~
検体は「ホルマリン固定、切り出し、パラフィン包埋、薄切、染色、封入」といった工程を経て、病理組織標本が出来上がります。
①ホルマリン固定、切り出し
ホルマリン固定された臓器は、病理医によって、診断に必要な部分が切り出されます。
②パラフィン包埋
パラフィンというロウソクのロウのような物質を高温で溶かしたものに臓器を埋め込み冷やして固めます。
③薄切
ミクロトームと呼ばれる特殊なカッターで厚さ4μm程度に薄く切り、スライドガラスに貼り付けます。
④染色・封入
通常はHE染色という、組織の構築や細胞の形態を観察するための染色を行います。カバーガラスでふたをして(封入)標本が完成します。
⑤病理診断
出来上がった標本は病理医によって病理診断されます。
動物の血清から作られた抗体を試薬に用いて、標本中の物質を同定し、その局在や定性的な量の判定を行います。当院では現在150種類ほどの抗体を用いて、病気の診断や、抗がん剤(分子標的治療薬)治療の選択に役立てています。
手術で病変がとりきれたか確認するために臓器組織の断端を調べたり、リンパ節にがんが転移していないか調べたりする時に行います。
手術中に採取された検体から迅速に凍結標本を作製し、病理診断を行い、その後の手術方針が決定されます。
組織検査のようなブロック作製ができない、主に液状検体から標本を作製し、細胞検査士と病理医によって診断をします。
患者さんに与える苦痛が少なく、繰り返し採取できるもの(尿、喀痰、子宮頸部・体部などの婦人科材料)と、内視鏡や穿刺針を用いて行う侵襲性のあるもの(胸水、腹水、胆汁、乳腺・甲状腺 等)に分けられます。
当検査室では、液状化細胞診(LBC法)を採用しており、高い精度での診断が可能となっています。
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