放射線治療科

診療科概要

2024年4月より診療科部長の渡部に加え2人目常勤医として稲田が赴任し、横浜市立大学大学院放射線腫瘍学教室出身の医師2名体制となりました。大学病院での診療と研究の経験を活かし、大学病院と遜色ない水準の診療を行っていきます。また、規定の審査に合格し、2024年4月から2027年3月まで日本放射線腫瘍学会の認定施設として承認を受けました。この認定施設の審査は単に人員の規定を満たしているかどうかの確認だけではなく、実際に行っている治療の内容や治療装置の精度管理水準が問われます。施設の総合力が試されるため2024年4月時点では神奈川県内で17施設のみの認定となっています(大学附属病院と神奈川県立がんセンターを除く一般病院では9施設のみ)。

日本放射線腫瘍学会認定施設認定証

放射線治療装置はVarian社製TrueBeamです。装置の性能を最大限活用し、高精度放射線治療を行っています。高精度放射線治療とは、「放射線を当てるべき部分(腫瘍)へより多くの放射線を当て、当てたくない部分(正常臓器)へ当たる放射線を極力小さくする」ことで治療効果を向上させ、副作用を低減させる治療のことです。具体的には画像誘導放射線治療(IGRT)を用いた強度変調放射線治療(IMRT)や体幹部定位放射線治療(SBRT)などが施行可能です。

もちろん、いくら高度な装置が稼働していても人間が使いこなせなければ良い治療は行えません。当院では医師、看護師、診療放射線技師、医学物理士が日々研鑽を重ねることで、国内海外を問わず最新の知見(医学的証拠:エビデンス)を取り入れた治療技法や治療スケジュールを採用しています。近年では効率化のため放射線治療計画(患者さん毎にどのように放射線を当てるか作成する設計図のようなもの)作成を医師以外の職種が行い、医師は出来上がった計画を承認するだけという体制の施設が増えているようです。しかし当院では診察を担当する医師が責任を持って治療計画を作成し、十分な経験を持つ放射線治療専門医が修正、承認を行った後に治療を開始する従来の大学病院に準じた体制を堅持しています。

院内で行った治療に関するデータ収集を行うことで治療内容を振り返り、妥当な結果が得られているかどうかの確認も随時行っています。高価な治療装置や最新の治療技術が前面に出る傾向のある放射線治療業界ですが、最も大切なことは治療技術に溺れること無く患者さん自身にとって真に適切な治療を提供することであると考えます。当科では治療内容や有害事象をデータに基づいて詳細に説明し、患者さんと対話を重ねる中で病状や生活環境に応じた最適な治療方法を提案するよう心がけています。放射線治療以外の治療法を採用した方が患者さんのためになると考えられる場合は、その治療法を検討するようお勧めすることもあります。

頭頚部がん、前立腺がん、食道がん、肺がんなどのがんは放射線治療を根治治療として選択することが可能です。通院回数を減らすことによって日常生活への影響少なくするため、乳がんの乳房温存術後照射における寡分割照射(伝統的に25-30回のところを16-20回に短縮)や前立腺がんの根治照射における寡分割照射(伝統的に37回-40回のところを28回に短縮)に積極的に取り組んでいます。また、根治が望めない病状の患者さんに対しても痛みや痺れなどの苦痛症状を軽減させるための緩和的放射線治療を行っています。特に骨転移への緩和照射では疼痛によって通院が難しい方も多いため、5回や1回で終了する短期照射スケジュールを積極的に採用しています。

当院は地域がん診療連携拠点病院に指定されており、抗がん剤治療など放射線治療以外のがん診療体制も充実しています。現代のがん治療においては複数の治療手段(手術、薬物療法、放射線治療)を組み合わせる集学的治療が非常に重要です。当院では充実した抗がん剤治療と合わせて一人一人に最適な化学放射線治療を行うことで根治性の向上を目指すことが可能です。

当科で行った治療の紹介

頭頚部がん(咽頭がん、喉頭がん、口腔がんなど)

頭頚部がんの照射範囲には眼球、視神経、脳幹、耳下腺など重要な臓器が多く存在しています。腫瘍に十分な放射線量を当てつつ、これらの重要な臓器へ当たる放射線量をいかに減らすかが問題となります。この問題を解決するため、早期喉頭がん以外の症例に対しては基本的に全例で強度変調放射線治療(IMRT)を用いています。最新の照射技術を用いることで、機能温存を行いつつも手術と遜色ない治療成績を目指します。

IMRTを用いて強弱を付けることで、右側(画像の左側)の腫瘍には高線量を当て、その他の細胞レベルで転移が想定される範囲に弱めの放射線を当てている。また、脊髄は耐えられる量を超えないように避けている。

IMRTを用いて強弱を付けることで、右側(画像の左側)~上咽頭(画面の中央上側)の腫瘍には高線量を当て、その他の細胞レベルで転移が想定される範囲に弱めの放射線を当てている。

前立腺がん

根治照射例では全例で強度変調放射線治療(IMRT)を用いています。治療計画直前にMRIを撮影し、前立腺の輪郭を精密に判別して治療計画を行っています。治療直前に毎回cone beam CT(治療装置と一体の位置照合用CT)を撮影し、前立腺の位置や形状、直腸内容物の状態、蓄尿状態を確認した後に照射を行います。 骨盤内リンパ節転移を有する進行がんに対しても、IMRTの技術で強弱を付けて照射することで有害事象発生率を極力下げながらも根治を目指すための治療が可能です。

IMRTを用いることで前立腺(画像中央)周囲には十分な放射線を当て、直腸(画像の下側)には極力当たらないように避けている。

肺がん

早期がんに対しては体幹部定位放射線治療(SBRT)を行っています。切除可能肺がんに対する治療の第一選択は手術ですが、何らかの理由で手術が行えない方や手術を避けたい意向の方に対しては有用な治療です。腫瘍の移動を最小化するため、精密な体の型取りや呼吸抑制を行った状態で治療を行っています。1回20分程度の治療を5回行いますが、入院の必要は無く外来通院で治療可能です(入院をご希望される場合は呼吸器内科と相談になります)。有害事象の非常に少ない治療であり、80歳代~90歳代の高齢患者さんにも安全な治療が提供できます。

また、進行がんでも放射線治療技術や薬物療法の進歩により治療成績が向上しています。腫瘍には充分な放射線量を当てながら脊髄や心臓、肺に当たる放射線量を極力少なくするため、精密に調整した3次元原体照射(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)を症例によって使い分けています。

SBRTで多方向から腫瘍の形状に合わせたbeamを照射し、腫瘍に集めることで腫瘍周囲のみに威力の強い治療を行っている

IMRTを用いて肺内の原発巣と縦隔リンパ節転移には高線量を当てつつ、肺や脊髄には極力高線量が当たらないように照射している。

食道がん

手術可能症例に対しては化学療法との同時併用によって手術と遜色ない治療成績が得られます。手術不能の進行例でも根治を目指すことが可能です。腫瘍へ十分な放射線量を当てつつ、周囲の正常臓器(肺、心臓、脊髄など)へ当たる放射線量を減らすために精密に調整した3次元原体照射(3D-CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)を症例によって使い分けています。

IMRTを用いて心臓を避けて食道のみに照射している。

IMRTを用いて腫瘍がある場所には強く、細胞レベルの転移が想定される範囲には弱めに強弱を付けて照射している。

骨転移

痛みを軽減させ、生活の質を向上させる目的の緩和照射を行っています。従来は10回以上の照射を行うことが主流でしたが、近年は少ない回数の照射でも治療効果は変わらないと言われています。当院では5回や1回の短期照射スケジュールを積極的に採用しています。疼痛のある症例では照射時間を短縮するため原則として3次元原体照射(3D-CRT)での治療としていますが、周辺に重要臓器がある場合は強度変調放射線治療(IMRT)での治療を行うこともあります。

IMRTを用いて肋骨転移にのみ集中的に放射線を照射している。腎臓や肝臓が近くに存在しているため、これらの臓器を避けるように設定している。

  • 診療科部長

    渡部 成宣わたなべ しげのぶ

    専門領域 放射線治療
    認定/
    資格
    日本医学放射線学会放射線科専門医 日本医学放射線学会放射線科研修指導者 日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 博士(医学) 産業医
  • 稲田 悠太郎いなだ ゆうたろう

    専門領域 放射線治療
  • 非常勤医師

    黒木 俊寿くろき としひさ

    専門領域 放射線治療
    認定/
    資格
    日本医学放射線学会放射線科専門医 日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医
月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
午前 渡部■
稲田■
渡部★
稲田★
渡部■
稲田■

黒木★
渡部■
稲田■
渡部■
稲田■
午後 - 渡部★
稲田★
黒木■ - -

■…新患のみ
★…再診のみ

  • 月曜日午前、水曜日午前・午後、木曜日午前・午後、金曜日午前・午後に初診をお受けします。疾患によっては特定の医師が担当するため、曜日と時間を指定させていただきますことをご承知おきください。
  • 事前に準備を行い速やかな治療を提供するため、初診の2日前までに紹介状原本と以下の資料を放射線治療科宛てに郵送していただきますようご協力の程よろしくお願い申し上げます。
    • 紹介状原本
    • 手術記録(術後照射の場合のみ)
    • 病理レポート
    • 読影レポート
    • 画像データ(DICOMデータを書き込んだCD-ROM)
      ※照射前に化学療法やホルモン療法などの全身治療が施行されている場合は全身治療前後の画像を含めてください。
      ※緩和照射で該当箇所がCT上判別困難な場合は判別可能なMRIを含めてください。

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