「感染症」は細菌やウイルスなどの微生物(病原体)が人に侵入して、発熱をはじめとする様々な症状が現れる病気です。感染対策室は、このような感染症の危機から、患者さんや病院で働く職員、病院に出入りする関係者を守るために活動している部署です。もともとは医療安全対策室に感染症対策を専門にする看護師が所属して、ICT(感染対策チーム)と協同して病院内の感染対策を担ってきました。COVID-19が発生する以前より、病院内で発生するすべての感染症をターゲットに、感染対策を担える感染症専門医師や感染管理認定看護師等が所属する専門の部署が必要となっていたことから、2021年4月に感染対策室が新設されました。
感染対策は医療の質を決定する重要な分野のひとつと考えられています。わが国で院内感染が注目され始めたのは、MRSA感染が問題となった1990年代でした。しかし当院では1977年にはすでに院内感染防止委員会が設置されており、感染症に対して早いうちから取り組んできた病院です。2003年に看護部で感染リンクナースの育成を開始したことで、2005年に当院最初の感染管理認定看護師が誕生しています。2010年5月に、当時国内最大となるVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)アウトブレイクを経験しましたが、ICT(感染対策チーム)を中心に感染対策を実施して、2011年10月に終息することができました。(藤沢市民病院 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)院内感染アウトブレイクに関する報告書[PDF])
ヒトと感染症の闘いは有史以前から続いており、医学が目覚ましい発展を遂げた現代でも、多くの病原体の脅威に晒されています。近年では新型インフルエンザ、エボラ出血熱、MERS(中東呼吸器症候群)、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が大きな問題となっています。また、薬剤耐性菌(治療薬である抗菌薬が効きにくくなった細菌)も年々増加しており、今後ますます適切な感染対策や抗菌薬の適正使用の重要性が注目されてきています。感染対策室の活動の歴史は浅いですが、専従職員も増え、医療関連感染症(かつて院内感染と呼ばれていました)が起こらないように日々情報収集、感染対策の指導、教育や研修、抗菌薬適正使用の監視や指導、感染症診療のサポートを行っています。これまでの当院の感染対策の実績をもとに、今後も患者さんが安心して受診、入院できるように、また病院で働く職員が安心して勤務できるように努めていきます。
感染対策室は下記の8項目を基本指針として、広く病院内や周辺地域の感染管理に関する活動をしています。
感染対策室は感染症専門医(兼任)1名、感染管理認定看護師3名、事務員1名で構成されています。
医師(兼任) |
1名 |
感染症専門医、小児科専門医 |
看護師(専従) | 2名 | 感染管理特定認定看護師(1名) 感染管理認定看護師(1名) |
看護師(兼任) | 1名 | 感染管理認定看護師(1名) |
事務 |
1名 |
感染対策室の具体的な業務内容は以下の11項目です。
院内感染対策委員会、ICM(感染対策マネージャー)連絡会、院内感染対策チーム(ICT)、新型コロナウイルス感染対策チーム等で用いられる資料及び議事録の作成並びに、その他感染対策に関わる部会の庶務に関すること。
当院と感染に係る連携施設に対し、平時より薬剤耐性菌、1類から5類までの発生届が必要な感染症などの情報を収集し、感染防止対策が必要に応じ実施されているか確認する。周辺施設より要請があった場合または当院で必要性があると判断した場合に、訪問し感染対策等を確認する。
また保健所、医師会も交え定期的な情報交換や、新興感染症等を想定した訓練を企画・実施する。
薬剤耐性菌及びその他微生物の検出状況の継続的把握と分析を行い、アウトブレイク事例の早期発見、実地調査、対応を速やかに行う。臨床検査室(微生物検査)からの情報に基づいて必要な調査を行い、対応方法を提案する。
院内における病院感染のリスクを把握し、病院感染管理システム構築と実施のために病院感染サーベイランスの計画、実施、評価を行う。サーベイランスの分析結果から、ベースラインを把握し感染率低減のための対策を立案する。また、JANIS(厚生労働省サーベイランス事業)など第三者評価機構へ参加し、当院の感染対策を評価する。
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)、感染対策チーム(ICT)と協力し、特定の抗菌薬の投与期間、投与量、投与目的の把握を行い、必要な事例については抗菌薬適正使用を図る。
感染管理認定看護師が行動のモデルになり、医療従事者の行う感染防止活動の実践の援護者として活動する。また、感染防止活動が適切に実施し、遵守できるように教育、指導する。
感染対策室、感染対策チーム(ICT)により、感染対策指針や関連するマニュアル等の遵守状況及び問題点を把握し、感染対策の強化を図ることを目的に、院内巡視による現状の確認と指導を行う。
院内職員全員を対象とした感染対策研修会を年間2回実施する。また必要に応じて各部門において目的を持った研修会を企画、実施し感染対策の強化を図る。
院内職員、連携施設から感染対策に関するコンサルテーションを受け、問題解決へ導く。
針刺し事故や皮膚粘膜体液曝露事故の把握と対策の検討し、職業感染者のフォローアップ計画の構築と運用を職員担当と連携して行う。また、職員の抗体検査(麻疹、風疹、水痘、ムンプス、B型肝炎等)やワクチン接種の検討を行う。結核等の接触者健診を企画、実施する。
病院感染を防止するための感染防止技術に関するマニュアルの作成、改訂を行い、安全で質の高い医療、ケアを提供する。
2021年度の感染管理業務の実績(2021年4月~2022年3月)
コンサルテーション(ICT/AST) | 169件 |
新型コロナウイルス感染症対応(検査、就業相談など) | 1,446件 |
院内巡視回数(AST/耐性菌/新型コロナウイルス感染症) | 639件 |
感染対策講習会・感染症関連勉強会開催 |
3回 |
院内感染対策・COVID-19関連マニュアル作成・更新 |
50回 |
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