頭頸部がん

頭頸部癌の発症頻度は全体の5%程度と考えられています。全体数は少ないですが、舌癌、咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌、鼻副鼻腔癌など種類が多く、発生原因や治療法、予後が異なるのが特徴です。診断には専門性が必要で、進行してから発見されることも多くみられます。治癒するためには早期治療が大切ですが、3分の2以上の患者さんは進行癌で受診されます。
頭頸部癌領域は、構造が複雑な事に加え、摂食、会話などに直接関与する部位であり、首から上という衣服に覆われず、常に人目にさらされる場所にあるという点が大きな特徴です。治療をすることで形態や機能に少なからず障害をもたらすことは避けられません。少しでもその障害が軽減できるように、手術、放射線治療、化学療法を併用し、治療後社会復帰にむけたリハビリテーションを行っております。
早期癌に対しては可能な症例では内視鏡や顕微鏡を用いて経口的に切除を行い、障害の軽減をはかっています。
放射線治療ではIMRT1)を導入し、治療効果をあげるだけでなく、後遺症の軽減も行っています。
抗がん剤治療は放射線治療と併用することが多くなっていますが、再発や遠隔転移した症例に対しては、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬2)などを用いて治療を行っております。
抗がん剤治療の開始時は入院が必要ですが、その後は通院での治療が可能です。
湘南地区では頭頸部治療を行っている病院がほとんどなく、この地区で頭頸部癌治療の中核機関となっております。

  • IMRT
    強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy)とは、コンピュータの助けを借りて正常組織の照射線量を抑えつつ、腫瘍部分に放射線を集中して照射できる画期的な照射技術です。最適な照射方法をコンピュータによって計算し、計画(治療計画)をたて、計画通りに照射を行うため毎回の位置決めに高い精度が必要あり、コンピュータによって制御されています。このため一回一回の治療に通常よりも時間がかかってしまいます。
    このような照射方法をとることで、腫瘍制御率を向上させ、合併症の頻度を低くしています。
  • 免疫チェックポイント阻害薬
    免疫チェックポイント阻害薬は免疫抑制シグナルの伝達を阻害することで、免疫チェックポイント分子によるT細胞の活性化抑制を解除します。
    頭頚部癌に対して保険適用となっている薬剤は、抗PD-1抗体薬であるニボルマブとペンブロリズマブの2種類です。従来の抗がん剤とは異なる作用機序のため、副作用も異なります。T細胞が全身の各臓器に浸潤して免疫反応を起こし、免疫反応が過剰になることで起こります。この副作用は自己免疫疾患に類似した症状を呈し、免疫関連副作用(immune-related adverse event : irAE)と呼ばれています。
    irAEのうち重大な副作用
    a)アナフィラキシーショック
    b)間質性肺炎
    c)劇症型1型糖尿病
    d)重度の皮膚障害
    e)脳炎・脳症
    f)ギランバレー症候群
    g)心筋炎・心不全
    h)血小板減少症
    i)急性副腎不全
    j)腎炎・急性腎不全
    k)大腸炎、消化管穿孔
手術風景
手術風景

対象の診療科

  耳鼻咽喉科

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