胃腫瘍の発生と進展
GISTは胃粘膜下層から発生します。腹膜転移や肺や肝臓などの血行性の転移がおきます。病変が進行すると、局所では、胃の通り道が狭くなり食物の通過が妨げられ腹満感や悪心、嘔吐などの狭窄症状が出現します。
また、腫瘍から出血すると、便が黒くなったり、吐血したり、貧血の症状(立ちくらみやショック)がでることがあります。
進行程度
病変の診断は検査所見、手術所見でもある程度の判断はできますが、最終的には原発巣を顕微鏡でくわしく調べて(病理検査)、後日(術後1~2ヶ月程度)決定されます。病理学的悪性度は、完全に治る確率とその後の経過観察や補助療法の目安となります。
当院の治療成績
5年生存率:94.1%
手術に関して
手術の目的には、
1)腫瘍を肉眼的に取り切って治癒を目指す“根治的手術”
2)腫瘍による症状を改善するための“緩和的手術”
3)腫瘍を減量する“減量手術”があります。
手術では、まず肝臓や腹膜転移の有無を、病変の程度や範囲を観察します。根治的手術が可能であると判断した場合には、病変を含めた胃を切除します。術式は、最終的に手術中の所見によって決定します。
根治的手術が困難で、腫瘍に伴う出血や狭窄症状があるか予測される場合には、緩和的手術として胃を切除するか、食物の通り道を確保するバイパス手術を行います。また減量手術として胃切除を行うことがあります。
胃切除の範囲は、多くの場合で、腫瘍を含めた胃の部分切除が行われますが、病変の位置や大きさにより、上部のでは胃全摘や噴門側胃切除(上1/3切除)、下部では幽門側胃切除(下2/3切除)や幽門から5cmを残して幽門温存切除が行われる場合もあります。
病変が食い込んでいる場所をとる目的で脾臓、膵臓の一部、副腎や横行結腸の一部、横隔膜の一部などを切除したり、胆嚢炎を予防する目的で胆嚢をとることもあります(合併切除)。
胃全摘術や胃切除術を行なったあとに、食物や消化液の通路を確保するために、食道や残った胃、小腸などをつなぎ合わせます(吻合といいます)。代表的な切除・吻合方法を下図に示します。切除後の状態を考慮して最も適当と考えられる吻合方法を選択します。
胃部分切除術
腫瘍と共に胃の一部を切除する
胃全摘術
胃全てを切除した後、食道と小腸を縫い合わせる手術
幽門側胃切除術
胃の下部2/3程度を切除し、胃と腸を縫い合わせる手術
噴門側胃切除術
胃の上部1/3程度を切除し、残った胃と食道を縫い合わせる
幽門保存胃切除術
幽門から5cm程度を残して幽門を温存する切除
バイパス手術
この手術に伴う危険性とその発生率
合併症とは、手術に伴い比較的早い時期に発症する、患者さんにとって不利益な病状のことをいいます。後遺症とは、手術から回復した後に、比較的長い期間にわたって続く可能性のある病状で、傷あと、胃の機能の喪失、開腹手術に伴う癒着など、避けられないものもあり、上手につきあっていくことが大事です。
合併症のみられる割合は約20%~30%で、合併症を起こすと、入院期間が長引くだけでなく、安静や絶食が必要になることや、ひとつの合併症がさらにその他の合併症を引き起こすこともあります。
致命的となること(1.6%未満)や、合併症が原因となり再手術が必要となること(約0.5%~2%程度)もあるため、合併症を起こさないよう細心の注意をしていますが、発生を完全に防ぐことは困難です。