新型コロナウイルスワクチン ~医療従事者へのワクチン接種について(第3報)
日本で接種が進んでいる新型コロナウイルスワクチンは、高い発症予防効果があり、重症化や死亡リスクも低くなることが様々な研究結果から分かっています。2回のワクチン接種後、時間が経つと抗体が徐々に減少しますが、3回目の接種(追加接種)により、速やかに抗体が再上昇(2回目接種後と比較しておよそ2.6倍)することを2022年1月に第2報として公表しました。また、医師、看護師をはじめとする当院の医療従事者591名を対象とした3回目ワクチン接種の副反応調査も公表しました。
ワクチン3回目接種によって抗体が上昇した後、時間経過とともにどのくらい減少するかは、まだ分かっていません。そこで今回、第3報として3回目接種から9週間後までの抗体推移の調査を行いましたので、その結果を公表します(2022年3月現在、保険適用外であり当院で抗体検査を受けることはできません)。また、あわせて3回目接種後の副反応調査について、医療従事者1,334名の調査も公表します。
ワクチン3回目接種後の副反応
当院では医師、看護師をはじめとする医療従事者および保健所職員や救急消防職員を対象に新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種(ファイザー社製コミナティ筋注®)を2021年12月14日より開始しています。これまで、接種者の副反応の出現状況について中間報告(第2報)として公表しておりましたが、2022年1月31日に対象者の接種が完了したため、改めてデータをまとめましたので結果を公表させていただきます。
ワクチン接種の概要
当院で3回目の接種を完了した人数
2,314名(保健所・救急消防職員を含む)
副反応調査を行った対象者数
1,334名
副反応調査の対象者の内訳
接種直後の主な副反応
アナフィラキシーショック 0名(0%)
アレルギー症状 1名(0.02%)
アレルギー症状が出現した1名は、2回目接種時にも同様のアレルギー症状を呈しており、事前に予測された副反応のため、事前に充分な準備をした上で接種を行っています。3回目の接種で初めてアレルギー様の症状が出現した接種者はいませんでした。
接種後1週間以内にみられた副反応
注射部位の局所の反応
局所反応(ワクチンを接種した周辺の部位)は、3回目の接種では疼痛(接種した部位が痛む)が 89%、硬結(接種した部位にしこりができた)が22%、腫脹(接種した部位が腫れる)が28%、発赤(接種した部位が赤くなる)が11%で出現しました。1,2回目の接種と比較してほぼ同程度からやや多い頻度で局所の反応が認められていましたが、いずれも接種翌日が最大で、以降は徐々に改善していました。
全身の反応
全身の反応は、接種翌日がもっとも多く、37.0℃以上の発熱は約44%、倦怠感は約64%、頭痛は約46%、吐き気は約9%、筋肉痛は約40%、関節痛は約35%と2回目の接種時とほぼ同様でした。また、出現した副反応の強さは多くが2日目(接種翌日)に症状のピークがあり接種の翌々日には軽減または改善しており、これも2回目接種時と同様の傾向でした。
また、図には示していませんが、2回目の接種では1.8%程度の頻度でみられた、接種した側の腋窩(脇の下)のリンパ節の腫脹・痛みは3回目の接種では132名(約10%)の医療従事者に認められました。
副反応に対する主観的な印象
2回目の接種と比較して、3回目ではより重度・やや重度の副反応であったと感じたスタッフは32%、軽度・やや軽度であったと感じたスタッフは38%でした。
まとめ
以上のことから、2回目の接種の時に強い発熱や倦怠感が出現したからといって3回目にも必ずしも強い副反応が出現するとは限らないと言えます。逆に、これまでの接種で副反応が軽かったからといって3回目接種時にも軽いとは言い切れないため、事前に接種翌日の予定を空けておくことや解熱鎮痛剤を用意しておくなどの準備が必要かもしれません。
※注意
これはあくまで発熱や倦怠感などの一般的な副反応のことを示しており、2回目接種時に皮疹などのアレルギー反応や血管炎などといった副反応を経験した方は、3回目の接種をしてよいか、かかりつけ医とよく相談して確認をしてください。
※2022年1月の第2報での副反応の頻度の集計に一部誤りがあったため修正しています。
<参考情報>
厚生労働省
新型コロナワクチンの接種後の健康状況調査
藤沢市ホームページ
新型コロナウイルス感染症のワクチンについて
ワクチン3回目接種後の抗体推移
抗体価の推移
抗体価(IgG)は、2回目ワクチン接種から3週間後に平均60.3まで上昇しました。その後、2回目の接種から32~34週間後の3回目接種前には平均5.2まで減衰しました(減少率91%)。しかし3回目接種によって、その3週間後には平均158.0まで上昇しました。2回接種後のピークに比べて約2.6倍の抗体価まで上昇したことになります。
その後、3回目接種から9週間後に平均108.2まで低下しました(減少率は31.5%)。2回目接種から9週間後は平均21.6まで低下(減少率64.2%)していましたので、3回目接種後の減少幅は2回目接種後より緩徐でした。
まとめ
新型コロナウイルスワクチンは、2回目ワクチン接種から3週間後に抗体価はピークに達しました。その後は時間とともに減少し、2回目の接種から32~34週間後の3回目接種前には約10分の1まで低下していましたが、3回目の接種によって2回接種後のピークに比べて約2.6倍の抗体価まで上昇していました。また、その後は減少に転じていましたが、その減少幅は2回目接種後よりも緩徐でした。さらに長期的な推移についても調査していく予定です。
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援)「新型コロナウイルス抗体検出を目的としたハイスループットな全自動免疫測定方法の開発及び同測定方法の社会実装に向けた研究(研究代表者:横浜市立大学 梁 明秀)」の支援を受けて行われました。
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