医療行為に伴う侵襲と合併症・偶発症の発症について
身体への侵襲(ダメージ)について
多くの医療行為は、身体に対する侵襲(ダメージ)を伴います。そのため、医療行為を行う際は、医療行為による利益(治療の効果)と身体への侵襲の不利益を検討し、利益(効果)が不利益を上回ると考えた場合に、その医療行為を行うことを決定します。
合併症・偶発症とは
人の体は一人ひとり異なるため、標準的な医療行為をしていても、常に同じ結果になるとは限りません。したがって、医療行為により病気や不具合が出現する場合があります。これが「合併症・偶発症」と言われるものです。
ひそかに進行していた病気の発症、加齢に伴う症状も含まれます。また、これまで大丈夫であっても心身の不具合が生じる場合もあり、すべてを言い尽くすことはできません。
注射・採血時に起こる合併症・偶発症
注射や採血等は、病気の診断や治療を行うために必要な医療行為です。
血管や神経の走行、血管のもろさ、血液の固まりにくさ、痛みの感じ方など、患者さん一人ひとり異なります。医療者が標準的な手技で行っていたとしても「神経損傷」「止血困難」「皮下血腫」「迷走神経反応」などが起こることがあります。
その他の主な合併症・偶発症
- 手術・検査に伴う出血、多臓器への影響、傷跡や痛みの残存
- 薬の副作用や効果の不十分さ
- カテーテル・チューブ類の挿入による出血、閉塞、抜去による臓器損傷
- 治療に伴う自己免疫力の低下による既存疾患の悪化
- 療養中の転倒や転落、誤嚥や誤飲、窒息(加齢に伴う症状の進行)
- 他の患者さんや面会者等からの伝染性疾患の感染(院内感染)
合併症・偶発症が生じた場合
医学的に最善と考える治療を行いますが、必ずしも最良の結果に結びつくとは限りません。予後に影響を及ぼすような後遺症の残存や、時には死に至ることもあり得ます。その際の医療費は通常の保険診療で行うため、患者さんに自己負担が生じます。医療行為によって発生する不可抗力は、注意深く行っていても防ぐことができないことをご理解いただき、ご協力をお願いいたします。
医療行為に伴う侵襲と合併症・偶発症の発生リスクについて、ご理解いただいたうえで、説明内容や治療内容についての疑問・不安がある場合は、遠慮なく主治医へお尋ねください。納得できない場合は、他の医療機関の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くことをお勧めします。その際には必要な資料を提供いたします。また、これにより、患者さんやご家族が不利益な扱いを受けることはありません。